近年のビジネス現場ではロジカルシンキングの重要性が高まっています。
日本でロジカルシンキングが広まったのは、『ロジカル・シンキング』という書籍がきっかけだと言われています。私は5年ほど前に著者の照屋華子さんの研修を受けたことがあり、とても参考になったのを憶えています。
今回はロジカルシンキングの活用方法や活用できるフレームワークなどを解説したいと思います。
ロジカルシンキングとは
ロジカルシンキングとは、「論理的思考」や「論理的な考え方」などを意味します。直感や感覚で物事を捉えるのではなく、筋道を立てて矛盾・破綻がないように論理的に考え、結論を導き出す思考法です。
ロジカルシンキングでは、複雑に絡んだ問題を各要素に分解して整理することで、問題や課題への理解を深めます。そのため、問題や課題を表面的にではなく本質的に捉えることが出来るため、深層にある原因を探り当てることが可能となります。
ロジカルシンキングの目的
ロジカルシンキングでは「筋道を立てて矛盾・破綻がないように論理的に考え、結論を出す思考法である」ことはお伝えしましたが、ロジカルシンキングの目的は何でしょうか?
ロジカルシンキングは、自分の中で思考を整理するツールでは、ありますが使用する目的は、自分の考えを相手に分かりやすく伝えることにあると言えます。
ビジネスの場での相手に伝えるべきメッセージとは
ビジネスの場で相手に伝えるべきメッセージを考える際には、下記の2点を明確にしてコミュニケーションをとる必要があります。
- 課題(テーマ)は何か?
- 相手に期待する反応とは?
課題(テーマ)は何か?
まずは思考すべき課題(テーマ)が何かを絞り込みます。例えば現在「18歳以下への10万円相当の給付のうち、5万円分はクーポンで配る」ことが話題になっている。
その中で「クーポンで配る場合に967億円の事務費がかかる」ことが課題として挙げられた。
そこで鈴木財務大臣は「967億円の事務費は過去の類似事業と比較して、過大な水準ではない」と発言したようだ。
この例で言うと、まず「18歳以下への10万円相当の給付」の目的が明確になっていないことで、何を優先すべきかが曖昧になっている印象を受けます。公明党の「子育て世帯応援」の選挙公約と自民党、財務省の「給付をするなら経済効果がある給付にしたい」との思いが玉虫色な政策になっていると報道されています。
まずは政治や行政の世界では、政策の「目的」が明確にされないまま、もくしくは目的がすり替えられて議論がすすんでいるのを目にします。ビジネスの世界では最終的な目的は「収益を上げること」だったりするので、政治や行政の世界ほど”的は外れ”議論は少ないと思いますが、思考する必要があります。
相手に期待する反応とは?
ロジカルシンキングは、「自分の考えを相手に分かりやすく伝えることにある」とお伝えしましたが、その前提からすると相手に理解してもらった上で何か反応をしてもらうことを意識して思考をするべきです。
例に出した「クーポンで配る場合に967億円の事務費がかかることが課題」ということに対して財務大臣が発言をする場合であれば、コミュニケーションの相手は「国民」です。
財務大臣が「国民」に期待すべき反応は、「政策の目的や内容に関して納得してもらうこと」ではなかったかと思います。そのように考えられていれば「過去の類似事業と比較して、過大な水準ではない」とのコミュニケーションで「国民」が納得するわけがないと考えられたはずです。
ロジカルシンキングで活用できるフレームワーク
ここでロジカルシンキングで活用できるフレームワークを2つ紹介します。
MECE(ミーシー)
MECE(ミーシー)とは、「Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive」の略で、日本語では「モレなく、ダブりなく」という意味となります。
例えば、ある商品の広告出稿企画を検討する際に、成人女性を対象として成人女性をグルーピングして行動を分析することになったとします。その際に「OLと主婦の行動を分析してみよう」となったとすると分析の対象に「モレとダブり」があることがわかりますか?
- OLの中には既婚者で主婦でもある方がいます。(ダブり)
- 学生、OL以外の職種の方、無職独身者などOLにも主婦にも属さない方々がいる(モレ)
このように「モレやダブり」があると検討した商品の広告出稿企画が的外れな戦略になってしまったり、奇跡的に的確な企画になったとしても社内承認などを得る際に説得力のある説明ができなくなってしまいます。
ピラミッドストラクチャー
ピラミッドストラクチャーは論理展開をおこなうためのフレームワークでメインメッセージを頂点に置き、その根拠を階層状に置くことで、論理展開を明解にすることができることが特徴です。自分の主張を論理的に構成できることで、矛盾点を見つけやすくなるメリットもあります。
MECE(ミーシー)、ピラミッドストラクチャーのアプローチ法
MECE(ミーシー)やピラミッドストラクチャーなどのフレームワークを活用する際に使えるアプローチ法をいくつかご紹介します。
演繹(えんえき)法
演繹法は確定している情報や大きな枠組みの原則から、個別の物事について考える推論方法です。いわゆる三段論法で矛盾の無い結論を導きます。具体的には次のように推論をします。
- 全ての人間はいつか死ぬ…一般論(大前提)
- あなたは人間だ…観察事項(小前提)
- あなたはいつか死ぬ…結論
上記の場合、「全ての人間はいつか死ぬ」、「あなたは人間だ」はどちらも正しい情報になります。よって、導き出される「あなたはいつか死ぬ」という結論も正しくなります。
演繹法は段階ごとに情報や問題を整理するため、最後に説得力のある結論を導きます。ただし、一般論(大前提)や観察事項(小前提)に誤りがある、論理が飛躍してしまうと結論が間違ってしまいます。
帰納法
帰納法は共通点や個別の事柄から結論を考える手法です。具体的には次のように推論をします。
- ONE PIECEを取り上げたビジネス書が売れた…事象①
- キングダムを取り上げたビジネス書が売れた…事象②
- スラムダンクを取り上げたビジネス書が売れた…事象③
- 上記の事象から「人気漫画を取り上げたビジネス書は売れる」…結論
上記の場合、異なる3つの事象から「漫画」と「ビジネス書」という共通点を探し出し、「人気漫画を取り上げたビジネス書は売れる」と結論を導きます。
複数の事象から共通点を導き出すため、情報の偏りが少なくなり、導き出した結論に説得力が増します。ただし、事象に誤りがある、共通点を導き出す過程で飛躍してしまうと矛盾した結論を導く可能性があります。
弁証法
弁証法は対立する事象をすり合わせることによって、矛盾を解決する結論を考える推論方法です。具体的には次のように推論をします。
- ゲームをしたい子供…主張①
- 勉強をさせたい親…主張②
- 子供に学習ゲームを与える…結論(解決策)
上記の場合、「ゲームをしたい」子供の主張と「勉強をさせたい」親の主張が対立していますが、「子供に学習ゲームを与える」というどちらの主張にも矛盾の無い結論へと導いています。
弁証法は1つ目の意見に対抗する2つ目の意見を提示し、相反する2つの意見をくみ取りつつ、良い3つ目の意見として結論に導くのが重要です。
なお、弁証法は2つの事象の妥協点を見つけるための推論方法ではありません。上記の場合、「ゲームの時間を制限する」、「勉強時間を決める」といった、2つの事象が譲歩するような結論だと弁証法とはいえません。
ロジカルシンキングでおすすめの書籍
ロジカル・シンキング
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まとめ
今回はロジカルシンキングの活用方法や活用できるフレームワークなどを解説しました。
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