これまで新規事業やマーケティングに関して解説をしてきましたが、私は14年前まで人材サービス企業で転職エージェントを8年やっていました。
部下が担当した方のサポートなども含めると8年間で約3,000名の転職をサポートした経験と、数百社の採用活動を支援した経験から得た『転職を成功させるためのノウハウ』を余すことなくご紹介できればと思います。
転職とは
転職とはなんでしょうか?
一言で言えば「勤務する会社を変えること」です。
勤務する会社を変えることは担当する業務、一緒に働く人、役割、収入など多くの変化を伴います。
ですから、しっかりした準備をしないと後悔することもあります。
もちろん転職で幸福を手にすることも可能ですし実際、幸せを手にした人を数多く見てきました。
転職をして不幸になりたい!!と言う人は見たことがありませんし、基本的に楽しい、充実した、刺激的な、日々を送りたくて転職を考えているのだと思います。
「収入を増やしたい」とか「大手企業で働きたい、またはスタートアップで働きたい」「今の上司とは合わない」などなど、今の会社、業務、同僚、待遇など「何か満足していない」状況を変える方法として転職を考えているのだと思います。
つまり転職には目的があるわけです。
私は転職を成功させる為の最初の重要なポイントが「転職目的を明確にすること」だと思います。
転職活動の流れ
転職活動には大きく3つのステップがあります。
転職するための情報を取集して整理する、応募先を決めて応募書類の準備、そして面接です。
今回は、 転職するための情報を取集して整理する 「転職準備」を詳しく解説していきます。
転職目的を明確にする
「転職活動を成功させる秘訣は、 転職目的を明確にすること 」です。あなたが次の仕事や転職先を選ぶときに重視する条件のことです。
どのような背景で転職を決意し、何を大切にしたいためにどの条件を優先するのかを整理します。
また、ここで重要なのが「自分にとっての転職目的」と他者に説明するための「転職目的」は、同じ軸である必要はあると思いますが、伝え方は整理する必要があると思います。
例えば「収入を増やしたい」ことが転職の理由だとします。その場合に自分の転職目的は 「収入を増やすこと」と考えるでしょう。しかし、 「転職の目的は収入を増やすことです」などと面接などで伝えてしまうと良い印象は持たれません。
「転職の目的が収入を増やすこと」だとしても、例えば営業職が同業界に転職するとすると
- 予算規模の大きい案件を担当してみたい(営業担当として)
- より大きな組織をマネジメントして予算規模の大きい案件を担当してみたい(営業マネージャーとして)
などです。
要は 「収入を増やすこと」が転職の目的なら、「より難易度の高い業務を担当したい」と置き換えて、結果的に 「収入も増える」と整理するなどです。
情報収集・分析をする
転職をする際に意識して欲しいのが「自分がやりたいこと」だけでなく「自分ができること」そして「会社がやって欲しい」ことです。
中途採用を採用企業の視点で見ると「自社の問題点や課題を解決する」ことと言えます。
ですから転職する際は自分のどんな経験、ノウハウ、スキルが採用企業の問題点や課題をどの様に
解決できるのかを伝えられるように整理することで内定が得られる確率が格段に上がります。
別の記事「人生100年時代のキャリア戦略」で紹介しますがキャリアを考える時には「世の中の状況」と「自分」を知る必要があります。
自分を知る
できることの整理方法
自分を知るの「できること」の整理方法として「キャリアの棚卸し」があります。
具体的には自分の「経験/成果・実績」「ノウハウ」「スキル」が転職先で、どのように活用できるのかを言語化できるようにしていく作業です。
【例】
・今まで経験した業務
・今まで経験した責任(売上責任、予算執行責任、採用執行責任、部下の評価・指導の責任など)
・今までに受けた教育や研修
・業務での成果/実績
・業務での失敗と、そこから得た教訓
・自分の性格(強み、弱み)
・今までのキャリアの方向性
・今後のキャリアの方向性
やりたいことの整理
世の中の状況を知る
PEST分析
政治、経済、社会、技術の4つの観点からマクロ環境(外部環境)を分析します。
P:Politics(政治)
- 日本の国家戦略はどうなっていくのか?
- 税制度や年金制度などは どうなっていくのか?
- 世界の政治情勢はどのようになっていくのか?
E:Economy(経済)
- 日本や世界の経済はどうなっていくのか?
- エネルギーや資源の問題や課題は何なのか?解決策はあるのか?
- どのような産業や企業/サービスが成長・衰退するのか?
S:Society(社会)
- 少子高齢化の進展
- 就労人口の減少
- 介護人材の不足
- 働き方の多様化(副業、リモートワーク)
- 格差の拡大
T:Technology(技術)
- AI(人工知能)の進化
- ロボット技術の進化
- IoT(Internet of Thingsの略でモノのインターネットのこと)の進展
- VR/AR(Virtual Reality:仮想現実/Augmented Reality : 拡張現実)の進化
- 遺伝子工学の進化
このような世の中の変化が、各業界や企業にどのような影響を与えるのか?また、どのよう能力やスキルが求められるか?を整理します。
転職希望業界や企業を調べる
政治、経済、社会、技術の4つの観点からマクロ環境(外部環境)の分析をおこなったら、次に転職の対象業界や企業を絞り込むために「候補業界」や「候補企業」について調べます。
業界・企業を調べる
まずは自分がやりたい仕事が「どんな業界」の「どんな会社」で可能なのかを調べましょう。
今までの経験を活かしての転職であれば希望業界の状況や候補企業くらいはイメージできるかと思います。
業界・企業がイメージできたら、より具体的に
- 市場規模はどれくらいなのか?
- ここ数年の市場規模の推移は?
- どのようなサービスや商品があり、それぞれ市場占有率はそれぞれどれくらいなのか?
- 市場形成の歴史や沿革は?
- それらのサービスや商品はどこの企業が提供しているのか?
- それらの企業の事業内容は?
- 興味を持っているサービスや商品の社内シェアは?
- 売上高、利益は?ビジョンや社風は?
などなど調べます。
上場企業であれば投資家向けに財務状況や事業戦略などを公開していますし、プレスリリースなどをWEBで公開している企業も多いのでその気になればかなりの情報を集められると思います。
採用情報を調べる
ある程度「企業」や「業界」に関することが理解できたら次に興味を持った企業の採用情報を調べます。まずは、興味を持った企業の採用ページをホームページで確認します。
企業の採用ページには、その企業の採用への想いなどが色濃く反映されています。経営者や人事責任者などから「求める人物像」や「その企業の魅力や事業ビジョン」などが語られていることがあります。逆に 採用ページには「募集要項」しかない…企業の採用ページも散見されます。
次に募集ポジションを確認します。事前にIRなどのデータを確認して、企業自体が成長しているのか?停滞しているのか?衰退しているのか?を確認した上で、成長に合わせた募集になっているかも確認します。
募集職種の中に希望するポジションがあれば、求人票を確認しますが、 募集職種の中に希望するポジションがなくても、その会社が力を入れ始めた事業などであれば、公開されていないだけで採用をおこなっているケースもあります。最近はオープンポジションで応募できる企業なども増えているので、そのような応募機会も利用したいものです。オープンポジションでの応募がない場合は、転職エージェントなどに相談してみると、非公開求人を紹介してもらえる可能性があります。
おすすめの転職エージェント
マイナビAGENT
株式会社マイナビの人材紹介サービス「マイナビAGENT」です。 人材紹介サービスを利用しての転職は、求人を閲覧できるだけの転職サイトと異なり、 業界職種に精通したキャリアアドバイザーからの転職活動アドバイスや 転職ノウハウなどの情報提供を受けられるサービスです。
マイナビAGENTの3つのメリット
- 応募書類の準備から面接対策まで、親身な転職サポート
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マスメディアン
マスメディアンは、宣伝会議、販促会議、ブレーン、広報会議など クリエイティブ・マーケティング関連の専門誌を発行し60年以上の 歴史を持つ「宣伝会議」のグループ会社です。 広告・Web・マスコミ職種を専門に転職・就職を支援しています。 4万人を超える転職支援実績を誇る広告・Web・マスコミの分野でNo.1クラスの転職・就職支援会社です。 広告・Web・マスコミ職種の中では、最大規模の求人数です。 最近では、インハウス求人(一般企業の宣伝、広報、マーケティング、デジタル・Web、クリエイティブ部門の求人)が増加しています。
外資系転職専門の【エンワールド・ジャパン】
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「やれること」「求められること」を整理する
情報収集が終わったら、「自分の経験・能力」と「企業の求める経験・能力」を比較してみます。
- 企業が求める経験・能力と自分の経験・能力が合致していること
- 企業が求める経験・能力で未経験、能力不足なこと
- 企業が求める経験・能力ではないが自信がある経験・能力
転職では自分の強みを出来るだけ伝えることが基本になります。
企業が求める経験・能力と自分の経験・能力が合致していることは特に重要です。
逆に求められる経験・能力で不足している部分を、どのように説明するかも考えなければなりません。
「経験がないこと」を「ある」と説明することはできません。
ただ、全ての経験や能力がある候補者は多くありません。 「経験がないこと」 だけで応募を諦める必要はないと思います。
会社や職種にもよりますが若手の転職だと経験やスキルが足りなくても十分に候補者になることが多いです。
あとは求人票に書かれていることはもちろん、書かれていない潜在的に企業が求める経験や能力を「業界動向」「競合他社採用動向」「応募候補企業の動向」などを元に「こんな経験や能力を持った人材が必要なのでは?」と仮説を立ててみます。
求人票にかかれていることと、その仮説を前提として自分の経験・能力が合致していることをリストアップします。
まとめ
今回は、 転職するための情報を取集して整理する 「転職準備」を詳しく解説しました。
次回以降で「履歴書、職務経歴書などの応募書類準備」と「面接」に関しても詳しく解説したいと思います。
私の転職エージェントとしての特徴
当時はメディアからの取材を受けて転職成功術をご紹介したりもしていました。私の転職エージェントとしての特徴が3つありました。
1.企業の事情も転職者の事情も理解している
大手の人材会社だと企業担当者と転職者希望者向けに分業されていることが多かったです。企業担当は転職希望者には会わずに、転職希望者担当からもらった書類をもとに各企業に機械的に推薦をおこなっていました。
また転職希望者担当も人事などに会っているわけでもありませんし、その会社に行ったこともない状態で「この会社など、どうですか?」と奨めるわけです。
私は自分が会社を訪問して人事はもちろん経営者や事業責任者クラスともお会いするようにしていました・そして、どんな人材が欲しいのか?どんな役割を担って欲しいのか?現在は、どのような体制でおこなっているのか?などをお聞きしました。
また転職希望者とも、私が直接お会いしていたので、どんな理由で転職を検討しているのか?どんな経験をしてきたのか?希望する条件はどのようなものなのか?などをお聞きして本当に合うと思った会社に推薦をしていました。
なので私が推薦した人の内定率はとても高く、人事からも転職希望者からも信頼をしてもらっていました。
2.基本は面接同席
私が推薦した転職希望者が書類選考を通過したら、可能な限り面接に同席させてもらっていました。もちろん企業と転職希望者との面接ですので、面接中は私は一言も発しません。
でも面接の場では企業はエージェントとの商談では話さないような情報を話したりします。また転職希望者も、エージェントとの面談では話さなかったようなことを話していたりします。
企業のポジティブな情報は、許可をもらって他の転職希望者にも伝えたり(転職希望者からは、なんでそんなことまで知ってるんですか?と驚かれました)、転職希望者にも許可をもらって、他の企業を受ける時の推薦コメントに、付け加えたりしていました。
3.私自身が新規事業を担当
あとは私自身が転職エージェントとして、企業担当・転職希望者の対応をするだけでなく、当時から新規事業を担当していました。前職で最後に手掛けたのが大手出版社との共同事業でエンジニア向けの転職情報サイトをプロジェクトマネージャーとして立ち上げました。
なので特に企業側の役員や事業部長クラスの方々とは話が合いました。なので人事を経由せずに、直接リクルーティングを依頼されることも多くありました。
このように人材サービス企業では珍しい経験をしてきました。
また8年間勤務した中で転職エージェントとしての業務以外に「大学の就活支援事業」「外資系企業のカントリーマネージャーなどのヘッドハンティング事業」「アウトプレースメント事業(再就職支援事業)」「採用計画の立案支援」「人材派遣事業」「求人広告販売」なども担当していました。
ここまで、人材サービスを幅の広く経験した人は多くないと思います。
部下が担当した方のサポートなども含めると8年間で約3,000名の転職をサポートした経験と、数百社の採用活動を支援した経験から得た『転職を成功させるためのノウハウ』を余すことなくご紹介できればと思います。
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