新規事業を世に出すまでには、「顧客課題を探す」「課題の解決策を検討する」「仮説検証と各種調査・分析」「決裁者の承認を得る」「チームビルディング」「プロダクト(製品・サービス)の開発」「プロモーション」など、様々なフェーズで様々なことを考え、取捨選択の決断をする必要があります。
そこで活用したいのがフレームワークです。フレームワークとは、ビジネスで何かを思考する時や課題解決を図りたいときに、頭の中を整理するためのツールです。正しく活用すれば思考や検証を無駄なくすすめられ、情報を整理して適切な意思決定をおこなえる確率を高めてくれる便利なツールです。
この記事では、新規事業を開発・運営するフェーズごとに、役立つフレームワークを計29個ご紹介します。
顧客課題を探す際に活用できるフレームワーク5選
1.ペルソナ(ペルソナシート)
ペルソナとは設定した課題と解決策の恩恵を最も受けるであろう理想の顧客(架空)のことです。
架空の顧客ですが実在する人間に限りなく近い架空の存在であり、ターゲットとなる顧客の特徴を詳細にまとめたキャラクターのようなものです。
ペルソナを整理して可視化したものがペルソナシートです。
2.カスタマージャーニー(カスタマージャーニーマップ)
カスタマージャーニーとは直訳すると「お客様の旅」となりますが、お客様が商品やサービスを知って、購入し、購入後はどうだったかという一連の流れを旅(ジャーニー)と捉えて整理したものです。
そして、カスタマージャーニーの中での「お客様の感情」「行動」「企業との接点」などを可視化/図式化したものが「カスタマージャーニーマップ」となります。
3.共感マップ
共感マップとは、「ペルソナが見たり・聞いたり・考えたり・感じたりしていることを整理することで、顧客の課題を整理するフレームワーク」です。
顧客のインサイト(深層心理での購買意欲の核心やツボ)を発見するために、ペルソナになりきって思考し課題を感じるためのフレームワークが共感マップです。
4.STP分析
STP分析とは、市場細分化を表す「Segmentation」、ターゲット層の抽出を表す「Targeting」、立ち位置の明確化を表す「Positioning」の頭文字からSTP分析と言われます。
S(セグメンテーション)とは?
セグメンテーションでは市場を分類して、小さいグループにわけていきます。顧客の行動や課題、ライフスタイルも多様化しており既存の市場分類に縛られず細分化することで魅力ある市場を発見します。
T(ターゲティング)とは?
セグメンテーションで分類した小さいグループから、どのグループを選んでアプローチすべきか決めるのがターゲティングです。
P(ポジショニング)とは?
ポジショニングでは、設定したターゲットに対して、自社がどの位置にいるのかを明確化します。ターゲティングしたグループによって、ポジショニングの切り口はさまざまです。ここで戦略を明確にしておけば方向性がブレにくくまります。
5.ポジショニングマップ
ポジショニングマップは、ターゲットとなる市場において、各社の製品やサービスがどのような立ち位置にあり、自社の製品やサービスでどの位置を目指すのかを整理するフレームワークです。
顧客が製品やサービスを購入する場合に重要視する要素を2つ選び、それをタテとヨコの軸に設定します。次に、競合他社の製品やサービスがどこにあるのかをマッピングし、自社製品やサービスがどこを目指すべきなのかの検討材料にします。
業界構造を理解するために活用できるフレームワーク3選
6.ファイブフォース(5フォース)分析
ファイブフォース(5フォース)分析とは、競合各社や業界全体の状況と収益構造を明らかにし、その中で自社の利益の上げやすさを分析するフレームワークです。新規参入や新製品開発、新ブランドの立ち上げ時などに、収益性を検証するのに役立ちます。
ファイブフォース分析の5項目
- 業界内での競争
- 業界への新規参入者
- 代替品の存在
- 買い手(顧客)の交渉力
- 売り手(サプライヤー)の交渉力
7.バリューチェーン分析
バリューチェーンとは、日本語では「価値連鎖」と訳されます。
「事業を主活動と支援活動に分類し、どの工程で付加価値(バリュー)を出しているかという分析するためのフレームワーク」
このフレームワークによって一つの事業を様々な活動に細分化し、そこから事業の競合優位性(強み)を把握します。
8.3C分析
3C分析とは、Customer(顧客・市場)、 Company(自社)、Competitor(競合他社)という、経営に重要な利害関係のある3者の視点で分析し、バランスのよい経営戦略を立てるためのフレームワークです。
3つの要素のうち最も大事なのは、もちろん顧客です。顧客に焦点を当てながら競合と自社を比較してどのように優位に立てばいいのかを検討する際に用いられます。
課題の「解決策」を検討する際に活用できるフレームワーク5選
9.オズボーンのチェックリスト
オズボーンのチェックリストは、ブレーンストーミングを作ったアレックス・F・オズボーン氏が考案したフレームワークです。
- Put to other uses(転用):他に使い道はないか?
- Adapt(応用):他に類似したものはあるか?過去のアイデアは使えるか?
- Modify(変更):大きさや色の変更は可能か?
- Magnify(拡大):大きくしてみたらどうか?
- Minify(縮小):小さく、軽くしてみたらどうか?
- Substitute(代用):他のものに置き換えられないか?
- Rearrange(置換):置き換えてみたらどうか?
- Reverse(逆転):逆にしたらどうか?
- Combine(結合):組み合わせてみたらどうか?
10.SCAMPER法
オズボーンのチェックリストをボブ・イバール氏が改良したフレームワークがSCAMPER法です。7つの切り口をもとにアイデア発想を助けるフレームワークです。「SCAMPER」とは、「Substitute(代用)、Combine(結合)、Adapt(応用)、Modify(修正)、Put to other uses(転用)、Eliminate(削減)、Reverse・Rearrange(逆転・再編成)」の略で、これらの質問に答える形で発想を促すというフレームワークです。
- Substitute(代える):他のものに置き換えられないか?
- Combine(組み合わせる):複数の製品をどのように組み合わせることができるか?
- Adapt(適応させる):他に類似したものはあるか?過去のアイデアは使えるか?
- Modify(修正する):大きさや色の変更は可能か?
- Put to other uses(他の使い道):他の使い方がないか?
- Eliminate(削減する):現在の製品から取り除けるものはないか?
- Reverse・Rearrange(逆転・再編成):逆にしても可能か?並べ替えをしても可能か?
11.4C分析
4C分析とは、顧客側の視点で事業を捉えるフレームワークです。顧客にとっての価値、かけるコスト、利便性、コミュニケーションのレベルといった視点で事業を分析することで、より受け入れられやすい事業の構築を目指します。
12.4P分析
4P分析とは、顧客視点の4C分析と異なり、視点を企業側において分析を行ないます。顧客にとっての価値を最大化する方策は何かを検討するフレームワークです。
13.リーンキャンバス
リーンキャンバスは、ビジネスモデルを9つの要素に分けて考えるフレームワークです。
仮説検証で活用できるフレームワーク6選
14.仮説検証の7ステップ
仮説検証をすすめる手順を7つのステップに整理しています。
15.MVPキャンバス
MVPキャンバスとはMVP※の創出やMVPを用いた仮説検証をするための計画を作成するためのツールです。リーンキャンバスと同じようにチーム内で、その内容を共有するために活用できます。
以下の10の領域に分かれており、それぞれを記載していきます。
16.リーンスタートアップ
リーンスタートアップとは「無駄を削り、効率的に仮説を検証しながら、検証結果をもとにサービスを改良していく開発手法のことです。
17.KPT
KPTとは、実行した施策などをkeep /problem/tryと3つの要素に分けて現状分析を行うフレームワークです。アジャイル開発※におけるふりかえりの手法として広まりました。
KPTの3要素
- K:keep = 良かったこと(今後も続けること)
- P:problem= 悪かったこと(今後はやめること)
- T:try = 次に挑戦すること
※短い開発期間を繰り返すことで、リスクを最小化しようとする開発手法のひとつ
18.PDCA
PDCAとは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の頭文字を取ったフレームワークです。Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)のサイクルを繰り返し行うことで、継続的な業務の改善を促す技法です。
19.OODA
OODA(ウーダ)とは、Observe(観察)、Orient(⽅向付け)、Decide(決⼼)、Act(⾏動)の頭文字を取ったフレームワークです。Observe/観察→Orient/⽅向付け→Decide/決⼼→Act∕⾏動を繰り返し行うことで、刻々と変化する状況を察知し、自分の思考と行動を変化させ、成果や結果を導き出す行動マネジメントモデルです。
市場規模算出で活用できるフレームワーク2選
20.TAM、SAM、SOM
TAM、SAM、SOMは市場規模を表す指標で、これらの指標は役員や投資家へのプレゼンテーションなどで活用できます。マクロ視点での調査・分析では「TAM」「SAM」「SOM」の算出をおこないます。
21.フェルミ推定
フェルミ推定とは、実際に調査することが難しいものや特定することができないものなどを理論を用いて推測し、短時間で概算するフレームワークです。ただし試算する上での基本数値は押さえておく必要があります。
プロモーションで活用できるフレームワーク3選
22.AIDMA(アイドマ)
顧客が購入する時の心理プロセスを順を追って分析するフレームワークです。顧客の立場に立ったマーケティング戦略を立てる時に使用するのが効果的です。
顧客が購入する場合には次のように5つの段階があります。
- Attention:注意
- Interest:興味
- Desire:欲求
- Memory:記憶
- Action:行動
23.AISAS(アイサス)
AISASは、顧客が商品やサービスを認知してから購入に至るまでの購買行動のプロセスを示したフレームワークです。インターネットの普及に合わせて確立したフレームワークでAIDMAのプロセスに「Search(検索)」と「Share(共有)」を加えています。
24.クリエイティブリーフ
クリエイティブリーフは広告のフレームワークですが新規事業開発でのコミュニケーション戦略でも活用できます。コミュニケーションは広告に限定したものではないですがクリエイティブリーフはターゲットユーザーに伝えるメッセージを整理するのに有効なフレームワークとなります。
詳しくは「新規事業でのコミュニケーション戦略を徹底解説!」で詳しくご紹介しています。
チームビルディングで活用できるフレームワーク
25.MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)
プロジェクトを進めていくにあたって、最終的に何を実現したいのかをチーム内で共有することはとても重要です。「MVV」は、自社が社会において存在する意義や役割を定義し、チーム内で共有するためのフレームワークです。
事業拡大期に活用できるフレームワーク
26.AARRR(アー)
AARRRとは、Acquisition(獲得)、Activation(活性化)、Retention(継続)、Referral(紹介)、Revenue(収益)の頭文字をとった言葉です。顧客行動を分解し課題を抽出しやすくするフレームワークです。
どのフェーズでも活用できる基本のフレームワーク
27.MECE(ミーシー)
フレームワークの基本中の基本。モレなく、ダブりなく分類することです。
例えば「成人女性」を「主婦」と「OL」に分けると主婦でOLをしている方もいるし(ダブりが発生)、主婦・OL以外の「成人女性」もいる(例えばフリータなど:なのでモレも発生)のでMECEではない。
「成人女性」をMECEに分類すると「既婚者」と「未婚者」とに分類できる?(離婚した人も今、結婚してなければ未婚だよな…?)
28.5W1H
What(なにを)、Who(誰が)、When(いつ)、Where(どこで)、Why(なぜ)、How(どうやって)という6つの要素を整理することで、漏れのない要素検討に使えるフレームワークです。
29.ピラミッドストラクチャー
ピラミッドストラクチャーは論理展開をおこなうためのフレームワークでメインメッセージを頂点に置き、その根拠を階層状に置くことで、論理展開を明解にすることができることが特徴です。自分の主張を論理的に構成できることで、矛盾点を見つけやすくなるメリットもあります。
フレームワークを使用する際の注意点
フレームワークを妄信しない
フレームワークは思考を整理するためのツールです。フレームワークで足りていな視点がないか?切り口を変えてみる必要はないか?自社の状況に応じて使い分けるとともにカスタマイズして活用すると良いでしょう。
目的を意識して活用する
フレームワークは、「顧客課題を活用する」「業界の構造を理解する」「プロモーション施策全体を整理する」など目的をもって活用するようにしましょう。
客観的な視点を持つ
フレームワークを活用して分析などをする時は、客観的な視点で取り組むことが必要です。サービスや製品への”想い”が強すぎて、主観や思い込みが入り込んでしまうと、意味のある分析ができなくなってしまいます。
まとめ
今回は新規事業開発で活用できるフレームワークをご紹介しました。上手に活用すれば、とても強力な武器になる反面、客観性をもって活用しないと誤った結論をだして正しくない施策を実行してしまう恐れがあります。
そうならないためには、何の分析をしているのか?この分析手法や軸で正しいのか?足りているのか?などを自問自答しながら使用するフレームワークを妄信しすぎないようにしましょう。
コメント