新規事業はリソースが限られることが多いため販売や営業を自社のリソースではなく外部リソースを活用することが有効なケースがあります。また業界構造を把握することで販売や営業で外部リソースを事業の強みとするようなケースもあります。
今回は新規事業でのチャネル戦略を解説します。
チャネル戦略とは
チャネル戦略とは、マーケティングの基本をなす「マーケティングミックス」4Pの1要素です。4Pとは、「Product(商品戦略)」「Price(価格戦略)」「Place(流通戦略)」「Promotion(プロモーション戦略)」のことであり、チャネル戦略は「Place(流通戦略)」にあたります。こちらは主に商品を売る場所や経路についての戦略を考えるもので、自社だけではなく中間業者も含めるのが特徴です。
チャネル戦略の種類
チャネル戦略を分類すると「販売チャネル」「流通チャネル」「コミュニケーションチャネル」の3種類があります。「コミュニケーションチャネル」に関してはコチラの記事で紹介していますので、この記事では 「販売チャネル」「流通チャネル」 について詳しく解説していこうと思います。
販売チャネル
販売チャネルとは、販売をするための経路のことで、販売方法や顧客が商品やサービスを購入できる「販売する場所のこと」です。具体的には、スーパーや小売店、ECサイトなどが販売チャネルにあたります。
流通チャネル(流通経路)
流通チャネルは、商品が販売者から、購入者に届くまでの流通ルートのことです。具体的には、商品が販売に至るまでの卸売・小売業者のほか、商品が売れてからの配送・運輸業者などの物流業者などです。
また自社と消費者・ユーザーが直接やりとりする直販流通チャネルと、他業者が中間に入る間接流通チャネルに分類することもできます。
チャネル戦略の役割
販売チャネル戦略の役割
販売チャネル戦略は、販売チャネルを顧客が商品やサービスを利用したいと思い立った時に買える状況を用意するための戦略です。
商品やサービスによって最適な販売チャネルは変わってきます。それに合わせた形で展開することで利益を最大化するのが販売チャネル戦略です。
販売チャネル戦略のポイント
ターゲット顧客を前提とした戦略とする
販売チャネル戦略の立案の前提としてターゲット顧客が設定されている必要があります。
ターゲット顧客ごとにペルソナシートを作成したり、ペルソナごとにカスタマージャーニーマップを作成して顧客の行動パターンを可視化しておくことで販売チャネル戦略の立案が効率的に進められます。
オムニチャネルを取り入れる
オムニチャネルとは、顧客との接点となるチャネルを複数用意して、それらを連携させることで、顧客の利便性を高め、顧客満足度向上につなげるものです。
例えば、洋服を買いに行った時に、店舗に在庫がないとします。そんな時も、ECサイトから購入できたり、受け取りは最寄りの店舗でできたりと、ユーザーが欲しい商品を好きな時に、好きな場所で受け取れるようにする戦略がオムニチャネルです。
これによりユーザーの満足度が向上し、リピート率や売り上げ向上を狙うことができます。
販売チャネル戦略の成功例
Apple
アップルは 2001 年よりるApple Store(アップルストア)の展開を開始している。メーカーでありながら自社小売店舗を持ったことで販売から顧客サポートまで含めた顧客体験を実現し、価値を高めています。
また、アップルは2010年に家電量販店のインターネット通販サイト経由の販売を停止したほか、製品を量販店に卸す中間流通業者の絞り込みもおこなっています。
アップルの販売チャネル戦略はiPhone、iPad、Macbookなど製品の強みによるところもありますが、販売チャネル戦略の成功事例だと言えるでしょう。
ユニクロ
オムニチャネルの成功例としてはユニクロがあげられます。
ユニクロは、アプリから店舗への送客率を上げるために、アプリの会員証を会計時に提示すると次回店舗の買い物で使えるクーポンがもらえ、購入履歴が残ります。
この機能の特徴はユーザーにとってはアプリ提示で店舗で使えるクーポンがもらえ、企業にとってはアプリの利用率や店舗の売上向上にもつながります。
逆に、店舗からオンラインストアへ送客する施策として、店舗で商品のバーコードをスキャンするだけで、オンラインストアや各店舗の在庫状況や商品のレビューのチェックが可能になります。
またオンラインの購入時には、通常なら5,000円未満の買い物の場合、送料がかかってしまいますが「ユニクロ店舗受取り」だと送料無料となるため、オンラインにしか在庫がないような場合でも「ユニクロ店舗受取り」にすることでユーザーにとってもメリットとなるサービスとして設計しています。
流通チャネル戦略の役割
流通チャネル戦略は、商品などがメーカーから消費者へと流通する経路を指します。メーカーは商品などが効率的かつ効果的に消費者に届く最適な流通経路を考え、構築します。
流通チャネルの種類
流通チャネルは、直接流通チャネルと間接流通チャネルに分けられます。
直接流通チャネル
直接流通チャネルは、メーカーと消費者が直結し、メーカーが消費者に直接販売します。最近はD2C(Direct to Consumer)と言われる自ら企画、生産した商品を代理店や小売店を挟まず、消費者とダイレクトに取引する販売方法が成長しています。ソーシャルメディア(SNS)やECサイト、直営店舗で消費者とコミュニケーションをとり、生産した商品を販売します。
D2C(Direct to Consumer)の成功事例
SHEIN(シーイン)
「SHEIN(シーイン)」中国発の企業だがSNS経由の「D2Cアパレル事業」でアメリカを中心にグローバルで急成長している。セコイアキャピタルなど名立たるVCが投資し、その企業価値は150億ドルともいわれています。
SHEIN(シーイン)の強みとしては
1.新作アイテムの開発スピード
「SHEIN(シーイン)」の特徴としては新作アイテムが毎日500~5,000点発表されることがあげられる。これはファストファッション大手のZARAの数倍の点数だと言われています。
「SHEIN(シーイン)」のメインターゲットではZ世代のユーザーは、新作アイテムをチェックするために毎日アプリを開くようです。
2.SNSを活用したデジタルマーケティング
Instagram、Facebook、TikTok、Twitterなどで公式アカウントを運用しており毎日数回の投稿をおこなっている。2021年11月26日現在でInstagramのフォロワー数は2,239万フォロワー、Facebookは2,383万フォロワー、TikTok310万フォロワー、Twitter38万フォロワーを獲得している。
またSNSで自社のアカウントで発信するだけでなく、Z世代に影響力のあるインフルエンサーと契約し、活用している。
3.企画力と製造力
SNSなどのデータを活用した「トレンド分析」と、商品企画/デザインでの「AIの活用」が毎日500~5,000点の新作アイテムの開発に活かされています。
また製造は、「世界のアパレル工場」といわれる中国の広州において、約300の協力工場で製造されています。
発売した商品の売れ行きがよければ、システム上で在庫調整や生産指示が自動的に入る仕組みとなっており、デジタル上でつながった協力工場が、すぐさま増産に着手する「C2M(Consumer to Manufacturer)モデル」を実現しています。
また、企画から生産・販売までを最短3日でおこなっており、最短2週間と言われるZARAや最短1週間と言われるイギリスのウルトラファストファッションブランドboohooを上回る最短モデルとなっています。
間接流通チャネル
間接流通チャネルは、メーカー→卸売→小売→消費者というように流通業者が介在します。間接流通チャネルをいくつかに分類することもできます。
開放的流通チャネル
商品を扱う流通業者の制限をなくすことで、幅広い場所で販売しようとする戦略です。日用雑貨や低価格で大量販売する商品で活用されています。
選択的流通チャネル
流通業者をある程度絞り込み、販売する戦略です。家電など修理や保守などのアフターサービスが必要な商品で活用されています。
排他的流通チャネル
卸売や小売を完全に制限して販売する戦略です。メーカーの販売意図を明確に反映させたい商品や、厳密にブランド・イメージを管理したい商品に適しています。カーディーラーなどが代表例です。
チャネル戦略立案で活用できるフレームワーク
カスタマージャーニーマップ
カスタマージャーニーマップとは、「顧客が製品・サービスとのかかわりの中でたどる一連のプロセス」を「旅」と捉えて、顧客の実態を把握したりするために活用するフレームワークです。
「カスタマージャーニー」におけるジャーニーとは、顧客の購買行動における「旅程=CX(顧客体験=Customer Experience)」のことです。
つまり、カスタマージャーニーマップとは、カスタマーのCX(顧客体験)を可視化したものになります。
詳しくは「カスタマージャーニーマップの作り方を徹底解説!」で解説しています。
バリューチェーン
「バリューチェーン分析」とは、商品研究/開発から販売、アフターサービスまでを活動ごとに切り分けて分析するためのフレームワークです。 個別の活動ごとに分析することで、どの工程で高い付加価値を提供できるのか、またはどの工程に課題があるのかなどを整理できます。
まとめ
今回は新規事業でのチャネル戦略を解説しました。オムニチャネル戦略やD2CモデルやC2Mモデルなどが成長の源泉とするような企業が増えています。
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