新規事業開発で、もっとも重要なことの1つが「ユーザーインサイト(ユーザーの内面に隠れている本音)の発見」です。
今回は、ユーザーインサイトを発見するためのユーザーインタビューの秘訣を徹底解説します。
ユーザーインタビューとは
ユーザーインタビューとは、商品やサービスのユーザーに対して、質問に回答してもらう形で意見を聞き取るリサーチ手法です。
ユーザーインタビューは、様々な用途で活用されますが、本記事では新規事業の立ち上げをおこなう際の、ユーザーインタビューに関して解説していきます。
新規事業の立ち上げ期のユーザーインタビューでは、インタビューの対象者はペルソナと呼ばれるサービス・商品の典型的なユーザー層です。
ユーザーインタビューは、アンケートなどの定量調査に対して、対象者の課題やニーズを深掘りするための「定性調査」に分類されます。
定性調査は、ユーザーインタビュー以外にもユーザー行動観察などもあり、数値化できないデータを扱い、分析します。
構造化インタビュー
事前に用意した質問項目で、一問一答形式のインタビュー手法です。
構造化インタビューでは、多くの回答者から同じ基準の情報を得られますが、インタビューへの回答に対して質問を重ねずに次の質問に進むため、回答の背景や心理の深掘りなどは、おこなわない手法のため、質問者が想定した範囲の回答しかえられなくなってしまうリスクがあります。
半構造化インタビュー
事前に用意した質問項目を使用する点では構造化インタビューと同じですが、決められた項目だけを聞くのではなく、ユーザーの回答に対してアドリブで別の質問を重ねて行くことで、回答の背景や心理の深掘りする手法です。
インタビュー前に決めた「インタビューで聞きたいこと」は確実に聞きつつ、回答の背景や心理まで聞き出せる点がメリットです。
ただし、インタビュアーのスキルによって得られる情報の質に大きな差が生じやすいリスクがあります。
非構造化インタビュー
事前に質問項目は用意せずに、テーマだけを決めて自由に対話をするインタビューです。
テーマのみ(例えば「忘年会のお店の決め方」など)を決めてインタビューするので、事前に想定していなかった発見があるかもしれません。
ただし、半構造化インタビューと同じく、インタビュアーのスキルによって得られる情報の質に大きな差が生じやすいリスクがあります。
ユーザーインタビューの目的
ユーザーインタビューの目的は、フェーズによって違ってきます。事前にユーザーインタビューで何を知りたいのか目的を明確にすることが重要です。
前提として、インタビューをする前に、仮説を立てておくことが重要です。例えば「忘年会の予約サイト」を立ち上げるためのインタビューをするのであれば、ユーザーが忘年会をおこなう目的や行動、課題と感じているであろうことを仮説立てておきます。
ユーザーインタビューの流れ
ユーザーインタビューの準備
ユーザーに聞く質問を洗い出す
まず、ユーザーに聞きたいことを洗い出します。
例えば、「忘年会の予約アプリ」の開発にあたりユーザー課題の洗い出しのためにユーザーインタビューをするのであれば、下記のような質問を洗い出します。
- いつ、忘年会の検討を開始しますか?
- 忘年会の検討は誰がおこないますか?
- 忘年会の検討はどこでおこないますか?
- 忘年会の参加者とはどのようにコミュニケーションを取りますか?
- 忘年会のスケジュール調整はどのようにおこないますか?
- 忘年会の場所はどのように決めますか?
- 忘年会の準備で困ったことはありますか?
- 忘年会のお店選びで何を一番重視しますか?
- 忘年会のお店選びで何を参考にしていますか?
質問をグルーピングする
洗い出した質問をグルーピングしてインタビューで「何を知りたいのか?」を明確にします。
忘年会の例では
- 忘年会の準備で困ったこと
- 忘年会の店選びの基準
などを知ってアプリのUI/UX(User Interface/User Experience)の設計に活用するなどです。
質問の聞き方/順番を決める
初対面の人にユーザーインタビューをする場合は、こちらが聞きたいことを聞き始める前に、緊張をほぐすためにアイスブレイクトークを準備します。例えば相手が簡単に答えられる「どんなお仕事をされてるんですか?」「お仕事はリモートワークですか?」「同僚と会う機会ってありますか?」など、気軽に答えられる内容の質問を最初にすると話しやすい雰囲気になります。
次に質問の順番を決めます。
例えば「グルーピングしたグループごとに質問する」や「時系列に沿って質問する」など回答者が頭の整理がしやすいように考えて順番を決めていきます。
先の忘年会の質問であれば
「最初に忘年会のことを考えるのはいつですか?」【検討のスタート】
「忘年会のことを考えたら「誰とやるか?」「どこでやるか?」「いつやるか?」など考えることがいろいろありますが何から検討を開始しますか?」【検討のフローの確認】
など時系列的に質問を進めていくと回答者も頭の整理がしやすいと思います。
質問の内容、順番、聞き方などが整理できたら、それらを書面化したインタビューシナリオシートを準備し、当日はインタビューシナリオシートを見ながらインタビューをすすめると良いと思います。
ユーザーインタビューを複数名で行う場合には役割を決めておきます。基本的には質問をおこなうインタビュアーは1名に絞り、残りはインタビュー内容の記録や、タイムキーパーなどです。
インタビュー対象者をリクルートする
インタビュー対象者の年齢や性別、既婚/未婚、子供あり/なし、年収などを設定します。
基本的には、ペルソナに近い人物像を対象とします。
対象者を決めたら、何人にインタビュアーをするかを決めます。
対象者と対象人数を決めたら対象に声をかけます。
探し方には主に「専門会社に依頼」「人脈を使う」の2種類があります。
専門会社に依頼する
メリット:設定したユーザー条件にあったインタビュー対象者を、効率的に集められる。
デメリット:費用がかかる。また、条件が複雑だったり、特殊だったりする場合は、対象者を集められないケースがあります。また一度案件をすすめると途中で条件を変更することが難しい。
人脈を使う
メリット:費用がかからない(もしくは少額の謝礼で済む)、インタビューをすすめながら対象者を追加で集めることなども可能で専門業者に依頼する場合と比較すると自由度が高い。
デメリット:チームメンバーに人を集めるノウハウがないと的外れな人を集めてしまうリスクもある。
ユーザーインタビューのコツと留意点
オープンクエスチョン/クローズドクエスチョン
質問には「オープンクエスチョン」と「クローズドクエスチョン」の2パターンがあります。それぞれの質問方法には有効な使用方法があります。理解して使い分けると求めている回答が得られる確率が高まります。
オープンクエスチョンとは
オープンクエスチョンとは、「これについて、どう思いますか?」「今後どうしていく予定ですか?」などのように、相手が答える範囲に制約を設けず、自由に答えてもらうような質問の仕方です。オープン・クエスチョンは相手からより多くの情報を引き出したい場面で有効です。
しかし、選択肢が多過ぎる質問をすることで、意図しない回答になってしまうリスクがあるので注意が必要です。5W1H(いつ/どこで/だれが/なにを/なぜ/どうやって)を用いて、答える範囲をある程度限定するなどの工夫が必要です。
クローズドクエスチョンとは
クローズドクエスチョンは相手が「はい」「いいえ」の二者択一や「AorBorC」の三者択一などで答えられるような、回答範囲を狭く限定した質問の仕方です。 クローズドクエスチョンは相手の考えや事実を明確にしたい場面などで有効です。回答内容を制限しますので「欲しい答え」を聞き出すような誘導質問になってしまうことがあるので注意が必要です。
バイアスを意識する/気をつける
認知バイアス
認知バイアスとは、自分の思い込みや周囲の環境、他人からの影響によって、論理的な思考が妨げられ、不合理な判断や選択をしてしまうことです。
例えば「A型の人は神経質である」「女性はピンクが好き」などが認知バイアスの例です。
認証バイアス
認証バイア
スとは、仮説を検証する際にそれを支持する情報ばかりを集め、反証する情報を無視また軽視してしまう傾向のことです。
代替品や顧客の可処分時間を意識する
自社の商品やサービスの直接的な競合になる商品やサービスだけでなく、代替品も意識してインタビューの準備をすすめましょう。例えば、忘年会は「年の終わりに同僚や仲間と1年の労をねぎらい、感謝をする宴会」なわけですが、飲食店でおこなわなくても「オンライン飲み会」でも良いわけです。
忘年会予約サービスは「参加者情報と料理、飲み物を選択すると、料理と飲み物が参加者の自宅に届く」サービスでもよいわけです。
関連書籍
顧客インタビューにフォーカスし、テクニック面まで詳細に説明されている良書です。
まとめ
今回は、ユーザーインサイトを発見するためのユーザーインタビューの秘訣を解説しました。
正しいやり方を理解して価値ある情報を集めることができるユーザーインタビューが実施できるようになってください。
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