#10 【STEP8】新規事業で有効な評価指標(KPI/CAC/LTVなど)を徹底解説|新規事業を立ち上げるプロセス

新規事業立ち上げプロセス

新規事業を立ち上げるプロセスの最終回『STEP8』は評価指標の解説です。

今回は新規事業で有効な評価指標(KPI/CAC/LTVなど)を徹底解説したいと思います。

この記事を書いた人
シマダオ

大企業の社内起業家。役員会での承認獲得のプロフェッショナル(直近2年間は役員会付議承認率100%)。BizDev時代に担当スタートアップ5社がIPO(株式上場)を達成。専門はマーケティングと交渉業務。

シマダオをフォローする

KGI/KPIとは?

既存事業の場合は「KGI」と「KPI」を指標として事業を管理などをしているケースが多いのではないでしょうか?

「KGI」とは、「Key Goal Indicator」の頭文字をとった言葉で日本語だと「重要目標達成指標」と訳されます。ビジネスの最終目標を定量的に評価するための指標です。売上高や利益などがこれに当てはまります。

「KPI」とは、「Key Performance Indicator」の頭文字をとった言葉で日本語だと「重要業績評価指標」と訳されます。KGIを達成するための各プロセスが適切に実施されているかどうか定量的に評価するための指標です。顧客数や顧客の売上単価など「KGI」を変動させる要素を分解した指標です。

新規事業立ち上げ時の評価指標とは?

新規事業の立ち上げでは先行投資をし、その後、時間をかけて利益を回収していくので初期のPLは赤字になる傾向があります、その状態で顧客獲得を続けると、赤字が続いてしまいます。

しかし、中長期で儲かることが分かるのであれば、現状赤字だとしても顧客の獲得は進めた方が良いという判断ができます。

つまり「中長期目線で儲かる事業モデルである」ということを根拠を持って説明できるようにして事業を推進する必要があるわけです。

ですので既存事業のように売上高や利益などを「KGI」として設定してから「KPI」を決めると正しい判断ができないケースが出てしまいます。

そこでスタートアップや新規事業で使用される評価軸がユニットエコノミクスです。

ユニットエコノミクスとは?

ユニットエコノミクスとは、顧客1人当たりの採算性を表す指標です。

顧客1人の生涯価値(LTV=Life Time Value)から顧客1人当たりの獲得コスト(CAC=Customer Acquisition Cost)を引き、プラスになっていればユニットエコノミクスは健全と言えます。

単に「LTV > CAC」を見るだけでなく、比率で表すことによって、ある特定の時期の状況を取り出して、他の複数の状況と比較しやすくすることができます。

そこでLTVをCACで割った指標をユニットエコノミクスの指標と考えます。ユニットエコノミクスは以下の数式で算出することができます。

ユニットエコノミクス=LTV÷CAC
※ちなみにユニットエコノミクスが3以上になると事業性があると判断できると、よく言われています。

LTV(Life Time Value)とは?

LTV(Life Time Value:ライフタイムバリュー)は「顧客生涯価値」とも言われ、1顧客が生涯にわたって生み出す粗利の合計のことです。

毎月、売上が上がるサブスクリプションモデルの場合は以下の数式で算出することができます。

LTV=1顧客あたりの月次粗利×平均継続月数
単発で売上が上がるようなビジネスモデルの場合は以下の数式で算出することができます。
LTV=1取引あたりの粗利×平均リピート購買回数

CAC(Customer Acquisition Cost)とは?

CAC(Customer Acquisition Cost・カスタマーアクイジションコスト)は「顧客獲得コスト」のことで、新規顧客を1社獲得するためにかかったコストを意味します。

CACは新規顧客獲得にかかった営業・マーケティング費用の合計を、新規顧客獲得数で割ると算出できます。

コミュニケーション戦略」でも紹介した下記のユーザー接点で言えばペイドメディア費用や営業費用などを、新規顧客獲得数で割ると算出できます。逆にオウンドメディアやアーンドメディアで顧客が獲得できるとCACが低くおさえられます。

CACは以下の数式で算出することができます。
CAC=新規顧客獲得に関する営業・マーケティング費用の合計÷新規顧客獲得数

新規事業でのKPI活用法

KPIには、大きく分けて「アウトプット」と「インプット」の2種類のKPIが存在します。「アウトプットKPI」は、売上や利益、顧客数といった「結果のKPI」です。それに対して「インプットKPI」は、そのアウトプットを出すために何をすればいいかという「具体的なアクションのKPI」のことです。例えば「契約社数を増やす」というKPIは「営業件数」×「契約歩留まり」になりますが「営業件数」が「インプットKPI」になります。

事業を開始したら、KGIを達成させるためのアクションを検討してインプットKPI化します。あとはインプットKPIを目標通りに実施した際に、アウトプットKPIとどのように連動するのかを検証します。何らかのアクションを実施した際にアウトプットKPIが想定通りの数値になれば、施策が正しかったことになりますし、しなければ施策に課題があることになります。その場合、インプットKPIを見直すか、施策を改良することなどが求められます。

新規ビジネスを立ち上げ、スケールさせるのは、「正しいインプットKPIを見つけ」「アウトプットKPIで効果を検証する」の繰り返しになります。

KPIで事業数値と各施策をウォッチするのに適したツールにKPIツリーがあります。

KPIツリーとは?

KPIツリーは、KGIという組織や企業の大目標を頂点として、大目標実現のために構成されたKPIとの関係性を、ツリーの形状を使って可視化したものです。

新規事業ではKGIは結果の数字としてウォッチしますがKPIの方が重要だと思います。まずはユニットエコノミクスがバランスが取れる状態を達成するため適切なKPIを設定して、KPIツリーの下部に位置する具体的なKPIから課題を考察すれば、施策の検討や実行にも有効です。

下記にKPIツリーのサンプルを用意してみました。KGIはLTV/CACが3以上になることだと設定します。その場合にLTVを高めるか、CACを下げるかの選択肢があることがわかります。※この例では原価の中にCACのコストも含まれてしまっていますが、できるだけMECEモレなく、ダブりなく)に分類することを意識します。

MECE(ミーシー)は「モレなく、ダブりなく」のことで論理的に思考をするときに基本となる考え方です。Mutually(お互いに)、Exclusive(重複せず)、Collectively(全体に)、Exhaustive(漏れがない)の頭文字を取った用語です。

新規事業で活用できる指標

ここまで紹介したユニットエコノミクス系の指標以外にも新規事業で活用できる指標があるので紹介します。

ROAS

ROASとは「Return On Advertising Spend」の頭文字を取った略語で、日本語では「広告の費用対効果」という意味になります。広告費に対してどれだけ売上として見返りを得られたかを表す指標です。広告費1円あたりの売上額を知り、広告費用の回収率を知ることができます。ROASが高いほど広告の費用対効果が高いということになるため、ROASの高い広告の予算配分を高くしたり、入札価格を上げたりするなどして活用できます。

コストの中で集客コスト比率が高い事業(インターネットサービスなど)の拡大期などに活用される指標です。ちなみにユニットエコノミクスはLTVが初期にはわからない(顧客が生涯にわたって生み出す粗利がわからないため)こともあるのでROASも意識するようにしていました。

ROASの計算方法

ROASは以下の数式で算出することができます。

売上÷広告費×100(%)

例えば、100万円の広告費に対して500万円の売上があったなら、500万円÷100万円×100=500%というROASの数値が算出できます。ROASは100%を基準にして、どれだけ広告費を回収できたかを判定することが可能です。そのため、この計算では広告1円に対して5円の利益を上げていることがわかります。一方、広告費100万円に対して50万円しか売上が上がらなかった場合、50万円÷100万円×100=50%と費用対効果が悪いことが判断できます。

ROI

ROIとは「Return On Investment」の頭文字を取った略語で、日本語では「投資利益率」という意味になります。初期投資が大きい事業などではユニットエコノミクスやROASを追っているだけだと判断を間違えてしまうことから初期投資が大きい事業では重要な指標だと思います。

ROIは以下の数式で算出することができます。

(売上ー売上原価ー投資額)÷ 投資額×100(%)

PUU/ARPPU/ARPU

PUUとは「Paid Unique User」の頭文字を取った略語で、日本語では「課金者数」 という意味になります。ARPPUとは 「 Average Revenue Per Paid User」の頭文字を取った略語で、日本語では「課金者1人あたりの顧客単価」という意味になります。ARPUとは「Average Revenue Per User」の頭文字を取った略語で、日本語では「顧客1人あたりの顧客単価」という意味になります。月額課金モデルのビジネスで使用されるKPIです。
PUUはそのままの数値なのでデータから抽出するだけです。
ARPPUは以下の数式で算出することができます。
売り上げ÷課金ユーザー数
ARPUは以下の数式で算出することができます。
売り上げ÷ユーザー数
つまり、お金を払ってくれたユーザーの数と、その方々の平均課金額をかけることで、売上を出すという計算です。

まとめ

今回は「新規事業で有効な評価指標(KPI/CAC/LTVなど)」を徹底解説させていただきました。

新規事業の撤退条件を決めておく

新規事業の場合、事業が計画通りに進まず撤退をするということは十分に想定できます。事業開始直後には撤退条件を設定しておくことも重要です。特に大企業の新規事業の場合は事業継続可否を決裁できる責任者と握っておかないと、やっとユニットエコノミクスでバランスが取れたのに事業をクローズする判断が出てしまうことなどもあります。

また日頃から事業継続可否を決裁できる責任者に情報(良い情報も悪い情報も)を伝える場を意識的につくるようにしておくことも重要です。

他の新規事業立ち上げプロセス記事も読んでみてください。

#02 【STEP1】新規事業ではアイデアではなく顧客課題を探す | 新規事業立ち上げプロセス
大企業の現役新規事業責任者が新規事業を立ち上げるプロセスを徹底解説します。今回は【STEP1】顧客(候補)の課題を探すを解説します。相談を受けていると『新規事業(事業開発)は誰も思いつかないようなアイデアを着想するもの』というイメージを持っている方が一定数います。
#03 【STEP2】課題の「解決策」を検討する | 新規事業を立ち上げるプロセス
大企業の現役新規事業責任者が新規事業を立ち上げるプロセスを徹底解説します。今回は【STEP2】課題の「解決策」を検討するを解説します。具体的な課題解決策の検討方法をご紹介する前に新規事業(イノベーション)での課題解決策を分類してみました。新規事業には大別すると「代替価値提供型」と「価値創出型」の2つがあると考えています。さらに「代替価値提供型」は「機能向上型」と「対象絞込型」に整理することができると思います。課題に対して、どのような視点で解決策を検討するかの参考にしてもらえればと思います。
#04 【STEP3】仮説検証のやり方を事例を基に徹底解説 | 新規事業を立ち上げるプロセス
現役の新規事業責任者が新規事業立ち上げステップを解説する第4弾、今回は仮説検証のやり方を事例を基に徹底解説しました!エリック・リースの「リーン・スタートアップ」でも「検証による学びとは不確実性の高い新規事業で進捗を的確に計る方法だ」と書かれています。
#05 【STEP4】新規事業でのTAM、SAM、SOMの試算方法を徹底解説|新規事業を立ち上げるプロセス
現役の新規事業責任者が新規事業立ち上げステップを解説する第4弾、今回はTAM、SAM、SOMの試算方法を徹底解説しました!TAM、SAM、SOMは市場規模を表す指標で、これらの指標は役員や投資家へのプレゼンテーションなどで活用できます。マクロ視点での調査・分析では「TAM」「SAM」「SOM」の算出をおこないます。
#06 【STEP5】経営層を納得させる事業企画書の極意!現役社内起業家が徹底解説
現役社内起業家が新規事業立ち上げステップを解説するシリーズ第5弾は「経営層を納得させる事業企画書の極意!」事業計画書とは、起業家や事業発案者などが、どのように事業を展開していくのかを可視化した資料です。投資家や金融機関、社内新規事業の場合は役員などは事業計画書に書かれた内容から事業の成長性などを予測し、出資や融資、事業化を決定する際の判断材料として活用します。事業計画書の作成者も頭の中にあるビジネスプランや資金計画を事業計画書として整理することで、それまで曖昧だった部分が明確になり、準備すべきものが具体的に見えるという効果もあります。
https://fukurec.com/00007/
#08 【STEP6】新規事業でのプロダクト(製品)開発方法を徹底解説|新規事業を立ち上げるプロセス
現役新規事業責任者が新規事業を立ち上げるプロセスを徹底解説します。今回は【STEP6】プロダクト(製品)開発方法を徹底解説します。私が経験があるインターネットサービスでのプロダクト(製品)開発ステップに関して紹介します。プロダクト(製品)開発に関しては開発するプロダクト(製品)によっては、これから紹介するステップは適さない分野もあると思いますが、どんな分野でも考え方は参考にしてもらうことができると思います。
#09【STEP7】新規事業でのコミュニケーション戦略を徹底解説! | 新規事業を立ち上げるプロセス
大企業の現役新規事業責任者が新規事業を立ち上げるプロセスを徹底解説します。今回は【STEP7】コミュニケーション戦略を徹底解説します。コミュニケーション戦略とは、商品・サービスなどの情報を、ターゲットユーザー層に効率的かつ効果的に伝えるための戦略のことです。新規事業では「適切な顧客」と「その顧客にとって重要な課題」を特定して「課題を解決できる製品」が出来たとしても成功するとは限りません。

コメント

タイトルとURLをコピーしました